ポワント・ドゥ・ラ・ピラット Pointe de la Pilatte (3476m)

9月2日 晴れ

ラ・ベラルドを出発し、1日目はピラット小屋に向かいます。ヴェネオン川にそってひたすら谷の奥へと歩いて行きます。谷の一番奥にピラット氷河が見えてきて、その正面に鎮座するのがポワント・ドゥ・ラ・ピラットです。小屋はこの氷河の脇にあります。2日目早朝に小屋を出て、ピラット氷河上に降りてからトラバース、氷河の始点まで登り、最後は4ピッチの登攀です。このコースは主に氷河上を歩くため、季節によってはクレパスが大きく口を開けており、迂回しながら登っていくために氷河を登りきるまでに時間がかかります。山頂からは彼方の緑の谷、眼下の白い氷河と展望が開け、登ってきた標高差を楽しむことができます。


出発地点標高 ラ・ベラルド 1713m、ピラット小屋 2577m
到着地点標高 ポワント・ドゥ・ラ・ピラット 3476m
標高差 1日目 864m、2日目 899m
所要時間 ラ・ベラルド〜ピラット小屋 3時間
ピラット小屋〜山頂 4時間
山頂〜ピラット小屋 2時間30分
道具 ピッケル、ヘルメット、アイゼン、ザイル、ハーネス、アイススクリュー、カラビナ、ヌンチャク、スリング
地図 IGN 3436 ET




1日目
この日はとても天気が良く、少し汗ばむくらいでした。1日目はピラット小屋に登るだけなので朝はゆっくり。道具の点検をして、10時05分に出発!

ラ・ベラルドからヴェネオン川に沿って歩いていきます。途中までは標高差は無く、平坦な道です。この川の両側には荒涼とした岩壁がそそり立っている。ピラット小屋までは約12kmの道のり。

途中、ヴェネオンの谷を振り返って見た所
右はクライミングルートが多くあるマイエ Maye 2518m

天気も良く、景色も素晴らしいので久しぶりの快適な山行だなぁ、なんて思っていたのもわずか1時間くらいで、ひたすら川沿いに歩く平坦な道と、重いザックとでウキウキ気分がトーンダウン。ラ・ベラルドから3.5kmほど歩いた所にカルレ小屋があるのですが、のんびり山歩きの人たちがテラスでおいしそうに何かを飲んでいる。「あぁ、今日は山小屋まで登ればいいのだし、まだ時間はたっぷりあるし・・・」、そう、ちょっとビールでも飲みたい衝動にかられたのは言うまでもありません。が、心を鬼にして(?)見て見ぬ振りをして通りすぎ、またひたすら歩き続けます。
しばらく行くとテンプル・エクラン小屋への分かれ道。この山小屋はエクランを南稜からアタックするひとの基地となる山小屋です。
もうこのあたりからピラット氷河と、目指すポワント・ドゥ・ラ・ピラット全容が見え始めます
。ヴェネオンの谷の奥まできたら急登になり、残りの約2kmくらいは400mの標高差を登っていきます。
13時10分到着、ピラット小屋は氷河の先端脇の崖の上約50mくらいのところに建っています。他にはドイツ人とフランス人パーティがそれぞれ1組だけでした。ここで昼食に。

ピラット小屋は石造りの立派な小屋です。トイレも水洗で、シャワーまで完備されてます。食事もおいしく(デザート付!)、ワインを1本あけてしまいました。各ドミトリーには2段ベッドがあり、10人収容。布団も厚く、敷布・カバーも清潔でとっても贅沢な山小屋です。

ピラット小屋全容、右側下は見えませんがピラット氷河
右に見えているのがエクラン南壁

午後はピラット氷河に降りてみて、少し足慣らし。
夜6時15分に流されるラジオの山岳気象情報によると明日も晴れとのことで一安心。この夜はお腹一杯のまま9時半就寝。ZZzz


2日目
朝5時起床。思ったほどは寒くない。多分−3度から0度くらいかな。簡単に朝食をとり、身支度開始。小屋から20mほど歩いた所に氷河への降口がある。ここでアンザイレンする。氷河上に降りた頃には山頂が朝日で赤くなり始めた。

朝日がピラットを照らし始める
山小屋は写真右下角くらい
ルートは左側の氷河から回りこんでコルまで登る

小屋からは氷河の右側に降り立つので、先ず左側へとトラバース。この段階ではほぼ平らに近い状態だし、クレバスもまだ無いので周りの風景を楽しみながら歩ける。
時間が経つにつれて太陽の日が山頂から段々と下へと当たりだしてくる。とても静かで、アイゼンが氷に食い込む音だけが聞こえ、氷河を渡る風は冷たく、自分の息が白く後ろへと流れる。
いよいよ登攀開始。ジグザグにスイッチバックしながら登っていく。

こういったクレバスを見ると、氷の城というか、氷の岩だなぁとつくづく思う。クレバスを越え、セラックを這い登りながら少しずつ高度を稼いでいく。

氷河全体を見ながらクレバスやセラックを避けて登攀する
が、止むを得ず確保しながら乗越えることも

氷河を登っているとたまにゴーとかギューとかいう音がする。
陽が当たり始めると眠っていた氷河が動き出してこういった音を出す。こんな時は氷河がいきていることを実感する。雪から氷になって、氷が化石みたいになっても生きているんだなぁ。

ようやく氷河を登り詰めてコルに到着
ここで標高3404m

コルから山頂まではあとわずか。かなり急な雪渓を登りきり、あとは数ピッチの登攀のみ

コルから山頂への登り

最後の登攀は特に難しいルートではないけれど、落石には注意が必要です。

11時05分 山頂到着
自分が登ってきたルートを眼下に見渡せる。
好天に恵まれ360度の展望。険しい断崖、岩壁、荒涼として峻嶮なエクラン山群。この見事な景観から目が離せられない。
山頂からピラット氷河を見下ろす
写真中央が細くなっている部分が氷河先端
その奥にヴェネオンの谷が伸びている
先端の左側山腹に山小屋を望める
右側にエール・フロワド3954m
エクラン山群のなかでも最も難しい登攀ルート
正面の一番高い頂がエクラン4102m、その左がメイジュ3983m

復路は往路と同じルートで山小屋へ帰る。降りる途中で西から来るいやな雲に、もしかしたらと思い足を速めたが、案の定山小屋が目の前に見えたあたりから霰に降られ、アイゼンをはずしているうちにすっかり濡れ鼠になってしまった。
2時山小屋へ到着、遅い昼食をとる自分がかなり空腹だったことに気づきサンドイッチをほうばった。今自分が登攀した雨にぼやけたピラットを見ながら、満足しながら・・・。



 





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